概要
アジア最大のモバイル業界イベントで、業界最大手の携帯電話事業者、機器プロバイダー、ソフトウェア会社、インターネット会社の他、さまざまな産業界の幹部や消費者が集う。
主要出展品目
5G、ビッグデータ、IoTデバイス、アプリ/ソフトウェア開発、クラウドサービス、スマートホーム、ネットワーク技術、他
開催期間
2019年6月26日〜28日
開催地
中国・上海市
規模
来場者数:60,000人以上(2018年実績)
出展社数:[MWCS] 550社、[4YFN] 130社(2018年実績)
今年の様子
「5Gの祭典」に見る中国の本気度…開催から一ヶ月が経ったMWCS19を振り返る
2019年6月26日から28日の3日間にわたって開催されたMWC上海。
※会場入口付近にあったMWC上海2019の文字
MWC上海は毎年6月末に上海で開催され、GSMAが主催するアジア最大級のモバイル業界イベントとして知られる。出展社による展示と、各種カンファレンスが多数行われるB2Bのビジネスイベントである。
MWCは毎年2月にバルセロナで開催されており、MWC上海はその”アジア版”という位置付けだが、ほとんどの出展者は中国企業なので”MWCの中国版”というのが実態である。
2019年は100カ国以上から75,000人ほどの来場者が集まり、出展社は500社以上あったという。
規模としてはMWCバルセロナよりも劣るが、ビジネスのスピード感や、5Gなどの新技術に対する前のめりな姿勢からくる”ダイナミズム”という意味では、バルセロナのそれを凌駕するものがあると感じさせられる。
「5G」一色だったMWC上海2019
今年のMWC上海を一言で表現すると、「5Gの祭典」だったと筆者は思う。
字のごとく5Gソリューション/製品のオンパレードで、会場どこを見回しても中国企業による5G関連の展示が行われていた。
中国は国策として「中国製造2025」で5Gを重点分野として掲げており、そういった背景もあってか、人民の5Gに対する期待と歓迎具合は、日本のそれとは大きな温度差があるように感じられた。
具体例を挙げると、華為(ファーウェイ)は展示ブースに「5G is ON」という文字を掲げ、「5Gは既に実用化の段階に入った」ことをアピールしていた。大手通信キャリア各社も5G展開ブランドをブースに掲げており、中国聯通(チャイナユニコム)は「5Gn」、中国移動(チャイナモバイル)は「5G++」、中国電信(チャイナテレコム)は「5G hello」の文字を大きくアピールしていた。
※各社ブースに掲げられていた5G時代の到来を象徴するキャッチコピー/展開ブランド
左上:華為(ファーウェイ)の「5G is ON」
右上:中国聯通(チャイナユニコム)の「5Gn」
左下:中国移動(チャイナモバイル)の「5G++」
右下:中国電信(チャイナテレコム)の「5G hello」
展示されていたものの例を挙げると、華為ブースではチャイナドレスを着た女性が生糸を一本一本紡ぐ様子を5Gによって8K画質で同時中継したり、上海から1,000km以上離れた(クルマで行けば11時間ほどかかる)河南省洛南市の鉱山にある重機を、5Gで遠隔操作するなどの各種ソリューションが展示されていた。
※生糸を一本一本紡ぐ様子を、5Gによって8K画質で同時中継
※1,000km離れた場所にある重機を遠隔操作するデモンストレーション
5Gに対する中国の本気度
5G一色だったMWC19の背景には、中国の5Gに対する本気度があると筆者は考える。
その本気度が顕著に現れているものを挙げると以下のような状況だ。
- 中国は「中国製造2025」で5Gを重点分野とし、政府の全面的な支援のもと、官民一体で効率的に5Gの導入を進めている
- 中国は5Gインフラに2018年から2025年の7年間で200兆円を投資予定(日本は2兆円なので、日本の100倍投資をしている)
- 5Gに必須な特許の出願件数は世界1位、シェアも約35%にのぼる(日本は6位、シェア約5%)
驚くのはこれだけではない。キーノートに登壇した華為のKen Hu副社長によると「華為は5Gに過去10年間で約4,400億円を投資」、「華為は5Gに関する特許を2,500以上保有しており、世界全体の20%を占める」というから驚きだ。
更にこれだけでなく、中国は「スタンドアロン方式(以下、SA)」で5Gを展開していく予定だという。
日本や欧米で採用される「ノンスタンドアロン方式(以下、NSA)」は、4G設備を活用しつつ5Gを提供する方式を指し、中国が採用するSAとは、4Gと5Gを完全に切り離し、5Gは5Gの設備を新たに構築する方式のことを指す。
コストが抑えられるのは前者のNSAだが、4G用のコアネットワークやクラウドがボトルネックとなり、5Gをシステム全体に提供することができないというデメリットを持つ。一方のSAは初期投資費用がかかるものの、自動運転など低遅延が求められる用途ですぐに5Gを活用することが可能となる。
そこで中国は5Gをスマートシティのインフラとして位置付けていることもあり、自動運転の早期実現なども踏まえ、コストはかかるが5Gをいち早く実現するためにSAで5Gを提供することを決断したようだ。
今年のMWC上海はそんな中国の ”5Gへの本気度” がひしひしと感じられる内容であった。
レポート目次
1.你好5G~MWC上海2019総括~
2.中国での5Gと+AIの活用状況
3.新たな主戦場「MEC」
4.次はどうなる?~世界における中国のプレゼンス~
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